シルヴァーノ・アゴスティ バイオグラフィー

作家、映画監督、詩人、俳優。1938年、ブレーシャ生まれ。内乱状態に陥った第2次大戦末期の北イタリアで幼少期を過ごす。物心がついた頃から映画や文 学に親しみ、飛び級でさっさと高校を卒業した17歳の彼は、崇拝していたチャップリンの生家を訪れたい一心で、寝袋を担いでヒッチハイクでロンドンへ。広 い世界を意識した彼は、そのままイタリアへ戻ることはせず、職を転々として日銭を稼ぎながら、ヨーロッパ各地、バルカン、中東、北アフリカと地中海諸国を 自分の足で巡り、旅の終着地にローマを選んだ。彼は今もよく口にする。「16歳になったら、若者はすべからく家を出て世界を見てまわるべきだ」と。

ローマでも自由気ままにアルバイトをしては、古本を買いあさり、シェイクスピアやドストエフスキー、チェーホフなど、重要な作家のほとんどをこの頃に全 集で読破し、創作の血肉とした。ある日、国立映画学校では授業料はおろか、寝食すべてが無料との情報を仕入れたアゴスティは、即監督コースへの入学を決 意。イタリア内外の著名な映画人に接する機会を持ちながらめきめきと実力をつけ、62年に硬直化したカトリックのあり方を皮肉った卒業制作を撮り、首席で 卒業。その褒美としてアメリカかモスクワで映画を学ぶ権利を得た彼は、文化的により違いのあるモスクワを迷わず選択。ソ連の国立映画学校で編集技術を重点 的に学びながら、エイゼンシュテイン研究に没頭する。旅好きは相変わらずで、卒業後ソ連15 カ国を巡り、ローマへ戻る。

イタリア国立映画学校時代の級友マルコ・ベッロッキオのデビュー作にしてイタリア映画史に燦然と輝く名作『ポケットの中の握り拳』(1965年)に編集 マンとして参加した後、『快楽の園』(1967年)で劇映画デビュー。権力、イデオロギー、世間の常識など、人間らしさを損なうあらゆるものから自由であ るために、表現者は経済的にも精神的にも何ものにも依りかからないで創作を行うべきだという考えを徐々に突き詰めていき、アゴスティは映画製作配給会社、 2スクリーンの映画館、出版社を次々と自身の手で経営するようになっていく。83年に開いた映画館はローマ有数の名画座として知られ、映画ファンはもちろ んのこと、映画人たちからも愛されている。

これまで製作に関与した映画の本数は劇映画・ドキュメンタリー合わせて50本余り。愛、労働、性、精神病、宗教、権力など、扱うテーマの幅の広さとラ ディカルな表現から、驚異のインディペンデント監督として各国の映画祭で絶賛されており、イタリアはもちろん、アメリカやフランスでも再評価の機運が高 まっている。
 小説や詩の執筆にも精力的に取り組み、イタリア最高峰の文学賞であるストレーガ賞ノミネート2作品をはじめとして、文学者としても大きな成果を残している。日本では、イタリアでベストセラーになった小説『誰もが幸せになる1日3時間しか働かない国』 (マガジンハウス)と『罪のスガタ』(シーライトパブリッシング)の2作品が出版されており、ラジオ番組やブログ、雑誌などで話題を呼んでいる。
 2011年現在、73歳。アゴスティは99歳まで生き、人生最後の日に愛を交わして「最高の人生だった」と言って最期を迎えると公言している。まだまだその旺盛な活動から目が離せそうにない。


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