Acustimantico レビュー&歌詞集 ①

『美しい季節』 ~アクスティマンティコ 2ndアルバム

音楽における静と動 ~ 『美しい季節』 レビュー ~

 突然ですが、僕はサザン・オール・スターズとレッド・ホット・チリ・ペッパーズ(Red hot chilli pepper's)は同じ種類の音楽だという説を唱えています。この2バンドの共通点は、彼らの音楽における静と動です。わーわー猥褻な言葉を叫ぶお下品 な曲をやるかと思ったら、しっとりとしたバラードで泣かせる。桑田啓祐が「マンピーのGスポット♪」と歌うテンションと、「エリー…マイ・ラブ…」と歌う テンションは、真逆でありながら、各々、静と動のパラメーターがマックスに達しています。これだけ対極の楽曲が、同じバンド内で成立しているのは、そのバ ンドが、大きな触れ幅に対応できる許容力を持っているからです。その許容力を可能にしているのは、バンドとしての一体感だったり、ソングライターの作曲能 力だったり、個々の演奏能力や表現力だったりすると思うのですが、こんなに大きな振れ幅で静と動を表現できるバンドは、世界広しといえどもそんなに多くは ないはずです。同じバンド内で、一貫性を持って極めて静と極めて動を表現するのは、とても難しいのです。

 2000年のフジ・ロック・フェスティバルで観たヨ・ラ・テンゴ(Yo La Tengo)のライブもまた、静と動を感じさせるものでした。当時リリースされたばかりの『ナッシング・ターンド・イットセルフ・インサイド・アウト』 (And then nothing turned itself inside out)から、そのジャケット(画像右)が表すような、静かでジャジーなナンバーを演奏したかと思うと、最後は10数分にも渡るノイズ・インプロヴィゼイ ションを披露。ギターをぐるぐる振り回して、観客を熱狂させていました。それは、バンドのギタリストで、もと音楽ジャーナリストだったアイラ・カプラン (Ira Kaplan)が持っている類まれな音楽センスの成せる業なのですが、そんな彼らのライブを観ていて気づいたことが一つあります。圧倒的な静があるから、 動もまた際立ち、恍惚へと押し上げてくれる。逆もまたしかり。まるで大きな発見のように記述しましたが、それは音楽を楽しむ上で、もっとも基本的なことだ と思います。

 アクスティマンティコのセカンド・アルバム『美しい季節』(La bella stagione)の静と動を検証してみましょう。1曲目の『愛の階級闘争』(Lotta di classe d'amore)はアップテンポの裏打ちナンバー。3曲目の『一日だけのの恋人』(Gli amanti di un giorno)は、うってかわって静かな曲調。ステーファノ(Stefano Scatozza)のアコースティック・ギターとラファエッラ(Raffaella Misiti)のボーカルのみで録られた、シンプルだけど深みのあるバラードです。そして6曲目『炎』(Fuoco)は、管楽器が唸る激しいナンバー(と ころで管楽器はときにとても攻撃的な音を出すと思います)。このようにアクスティマンティコは、情熱的に、またあるときは哀愁たっぷりに楽曲を奏でます。 そしてその中には、ある種のメッセージが隠されている場合が多々あるように思われます。上述した楽曲の歌詞の一部を見てみましょう。

愛の階級闘争
まだ思い出せるうちに
私の愛は不滅だ、と
lotta di classe d'amore
prima che sia tardi
troppo
per ricordare
che l'amor mio non muore

 (『愛の階級闘争』より)


あのことは ごめんなさい
西洋のシステムへの
ささやかなる貢献
それは私にとっては自然なことに
思えていたのだけれど
夢見るための炎 焔
炎 炎 炎 私は恋をして 炎と戯れる
chiedo scusa se l'ho fatto
mi è sembrato naturale
il mio piccolo tributo
al sistema occidentale
fuoco e fiamma per sognare
fuoco fuoco fuoco
m'innamoro e scherzo con il fuoco…
        (『炎』より)

 ラブソングともとれるこれらの楽曲は、「愛」や「恋」というキーワードを取り替えることで、反戦争や反社会体制といったメッセージが浮かび上がってき ます。その事実は、インタールードとなる7曲目『終わらせてくれ、ディミートリ』(Lasciami finire, Dimitri)で、スタンリー・キューブリック(Stanly Kubric)の映画『博士の異常な愛情』(Dr. Strangelove、1964年)からセリフを引用していることからも明らかです。つまり、アクスティマンティコは、このようなメッセージ性を発する という意識を持って演奏する中で、圧倒的な静と動を許容できるバンドになりえたのではないかと思われます。ゆえに彼らの表現する静と動には、レッチリやサ ザン、ヨ・ラ・テンゴともまた違った熱を帯びていて、それがたまらない魅力になっているのです。初のフルアルバムである『あこがれの季節』は、『愛の階級 闘争』に始まり、ティンパニーのかわいい音が絡む11曲目『冬の日の朝食』(Colazione d'inverno)まで、彼らの静と動がつまった1枚です。

<文:ハムエッグ大輔、訳:シナモン陽子>

Acustimantico / La bella stagione 『美しい季節』 (2002年)
1. Lotta di classe d'amore/ 愛の階級闘争 (2,56)
2. Radio/ ラジオ (4,17) 
3. Gli amanti di un giorno/ 1日だけの恋人 (3,01) 
4. Sette volte sette/ 7×7 (2,54)
5. La bella stagione/ 美しい季節 (3,46)
6. Fuoco/ 炎 (3,27)
7. Lasciami finire, Dimitri/ 終わらせてくれ、ディミートリ (3,34)
8. Polvere e vapore/ ほこりと蒸気 (4,00)
9. La terra di giovane/ 太古の地 (7,13)
10.Mikimaus/ ミッキーマウス (3,33)

11.Colazione d'inverno/ 冬の日の朝食 (5,17)
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